15年前の11月20日。この日は愛してやまないヨーキー(れん)の女の子が虹の橋を渡った日です。朝からふらついて様子がおかしかった。その時、かかりつけだった動物病院に連れて行ったけど、うちでは対処できないと言われ、紹介された動物病院に連れて行った。初めて受診するところだったけど、そこには患犬がいっぱいいた。でも……。
動物病院へ
れんの様子がおかしいと感じたのは、その日の朝。
ふらついて涼しいところを探そうとする。
水を大量に欲しがるから子宮蓄膿症ではないかと予測した。
夫と2人でかかりつけの動物病院の ❞Ni❞ に連れて行ったけど、うちでは設備がないから対処できないと言われ別の動物病院 ❞F❞ を紹介された。
そこは車で30分程度のところにあり、獣医師曰く「すごい先生」だって言うから、藁をもすがる思いで車を走らせる。
到着まで、れんは大人しくしてくれてたけどグッタリしている感じではなかった。
診察待ちの間は気が気ではなかったけど、れんはいつも通りだった。
そして名前を呼ばれて診察室へ。
病院自体の規模も大きくて、獣医師も複数名いるし設備もしっかりしている所だった。
当日、獣医師の言う「すごい先生」は留守で、他の獣医師が診察。
そして、検査したけど子宮蓄膿症ではないと言われ、原因がよく分からないって言われた。
急変
一度れんを預かって検査するというので、待ってると言ったけど時間を要するので後で電話しますから一旦帰宅してお待ちくださいと言われる。
私は気持ちが落ち着かず、夜は娘が用意してくれた食事にも手を付けることが出来なかった。
「嫌な予感がする」
ほとんど喋ることも出来ず、何も考えることも出来ず思考が止まり、ただただれんのことだけを思っていた。
そして、私の予感は的中した。
動物病院から電話が掛かってきた。
私はワンコールなる前に通話ボタンを押す。
「もしもし」
………涙が溢れて来た。
獣医師によると、炎症を抑える注射をしたられんの容態が急変したと言う。
私と夫は動物病院に急行した。
診察室に入ると、意識のないれんが横たわり心臓マッサージを受けていた。
私は膝がガクッとなって立っていられず、夫の支えがなければ崩れ落ちてしまう状態になる。
さっきまでこの子は生きていたんだよ。炎症を抑える注射をして急変したってどういうこと?
私はとっさに思った。
「獣医師が治療法を間違えたんだ。れんは殺された」
決して納得のいく治療ではなかった。
なぜなら、検査結果が連絡されることなく、治療法も連絡されることなく、私が納得して治療を進めてもらったわけではなく、「彼ら」が勝手に進めたからだ。
検査する。そう言ったじゃない?
治療するって言った?病気の原因を私に伝えた?
私は、れんはこの獣医師に殺されたと思ってる。
そして、私が獣医師にれんを渡した時の彼女の訴えかける目を15年経った今でも忘れられないでいる。
ペットロス
当時は、ペットロスという言葉はあまり認知されていなかったと思う。
ネットで検索して、私もその時初めて「ペットロス」と言う言葉を知った。
それから毎日毎日れんを思っては泣き、子供たちに気づかれないようお風呂に入って泣く。
食事もまともに取れず、私の顔から笑顔が消えていく。
なんで、初めての病院だったのにれんを預けてしまったのか?
なぜ、現在かかりつけになっている動物病院 ❞NA❞ を探せなかったのか。
今の獣医師なら、良くなっていたかもしれない。
私はれんに精一杯のことをしてあげられなかった。
もっとこうしてあげればよかった。
今でも、彼女の写真を見るたび自分を責めることを止められない。
そんな気持ちがほんの少しだけ和らいだのは2年ほど経ってからだ。
白姫との出会いが、私にほんの少し笑顔を与えてくれた。
れんは都内のお寺で供養してもらった。
遺骨は我が家の仏壇に入ってる。
手放すことはできない。お墓に入れることも考えてはいない。
いつか、私が死んだときにれんの遺骨と一緒に散骨してほしいと娘に頼んであるからだ。
れんと白姫
白姫は、れんと目が似ている。
そして、面白いことにれんと同じような行動をする。
もしかして、れんが白姫として戻ってきたのか?と思わずにはいられないほど似ている。
その白姫が18日に手術するが、私はれんのあの時の目がトラウマになっていて、怖くて仕方がない。
娘に話したら、「今度は先生だから大丈夫だよ。」って。
うん。あの先生なら大丈夫だよね。
ほんの少しだけ前向きになれたけど、怖いという思いは捨てることはできない。
ただ、先生は精一杯やってくれるはず。ずっと白姫を診て来てくれたのだから信用するしかない。
最後に
当時のかかりつけだった動物病院Niは、人当たりがよくてワンコにも優しい先生ではあるが、重病といった治療は出来ないと判断した。
れんのことがあって以来、先生に対する信用度が低下したため、フィラリアの薬と予防接種を受ける時のみにしか顔を出さなくなった。
空いてるし、待ち時間も短いことが便利だったの。
でも、いつだったか季節の変わり目で白姫が体調崩した時に、仕方なく診察してもらったの。
いまのかかりつけの動物病院NAが休診だったので。
しかし、やっぱり後悔したわ。
ロクに調べもせずに「あーこの時期、白姫ちゃんは体調崩してますね。いつもと同じだね」って薬を出しただけ。
やっちまったな・・・。
翌日、朝イチで今の動物病院に連れて行ったわ。
これ以来、Niには行かないしフィラリアの薬も予防接種もすべて、いまのNAにお願いするようになった。
Niには、大切な家族の命を預けることなんてできない。
確かに獣医師でも治せないことはある。
でも、れんの治療に関しては未だにこれっぽっちも納得できていない。